論文紹介

酸性過剰とイースト・真菌・カビの過成長急性の背部痛が慢性になる理由

酸性過剰とイースト・真菌・カビの過成長
Robert O. Young, PhD

Dr. Youngは化学、微生物、栄養の学位保持者で、真菌感染(イースト・真菌・カビ)と人間の病気の原因との関係を長年研究してきた。微生物中毒に関する研究と論文は米国で広範囲に認められており、その画期的研究は人名録に現在記載されている。博士はInnerlight Internationalの研究開発部門の副会長である。コロイド状の包括的な栄養フォーミュラを開発した。この製品は世界中に供給されている。

ひとつの病気:真菌感染

私の発見のひとつは唯一の病気があるというものである。それは食生活が逆転して引き起こされた血液と組織の酸性過剰である。砂糖と動物タンパクとくに肉、魚、卵、乳製品が豊富な文明化された現代の食事は血液を過剰に酸性化する。酸性化は次に微生物の拡散を促進する。微生物には共通の起源があり、これが多様な進化の過程を経る。まずウィルスとなり、次にバクテリアとなる。さらに、真菌とイーストになる。これは多形現象pleomorphismと呼ばれる。血液は肝臓や心臓のように生きた組織である。他人の体液や血液を採取したり移植を受けたりすると、文字通り異物の要素を受け取ることになる。

多形現象

Pleomorphicとは「形が多い」と言う意味である。多形現象は微生物学の基礎である。伝統的医学が信じている細菌理論の論拠を掘り崩すものである。ウィルス、バクテリア、真菌といった微形体はすべて同じ生物で、その進化の段階が異なるというだけである。その進化の最初の段階(原始的段階)は西洋医学の呼ぶウィルスである。ウィルスは非病理的である。ウィルスはその核が微酵母microzyme から成り、タンパクのカプセルで包まれている。生物学的環境が過剰に酸性化すると、この原始的段階は中間的段階に展開する。バクテリアの段階である。この段階が蓄積すると、最後の段階イースト、真菌、カビを含む段階に移行する。これらの形態は酸性化した血液や組織といった悪化した生物学的環境で拡散し展開する。非常に簡単な実験をしよう。冷蔵庫の電源を抜いたらどうなるだろうか?まず何が起きるだろうか? まずバクテリアが形成され、次にイースト、真菌、カビが発生する。そして突然、すべては腐敗する。これらの解剖学的最終段階にこの腐敗が起こる。

不均衡の周期

これらの諸段階を私は不均衡の周期と呼ぶ。不均衡の周期では、低いエネルギー、疲労、消化不良、肥満、明晰でない思考、うずきや痛み、主な疾患が現れる。これらはすべてこの周期の症状である。

酸アルカリバランス

これらの酸とアルカリの化学的バランスを血液と組織の中で維持することがとても大切である。酸とアルカリの状態は正反対である。バランスが取れていると、相殺される。しかし、身体の組織は過度の酸性になりやすい。この不均衡は病気の段階の端緒となる。科学的用語では、酸とアルカリの関係はpHとして知られている。身体のpHは内部環境と微生物に深い影響がある。血液と組織のpHはほぼ7.3であるのがよい。唾液と尿のpHは6.8−7.0であるのがよい。検査室での許容値は尿で5.5−6.5であるが、この数値だとかなり酸性である。

腎臓の目的

腎臓の目的は酸とアルカリを分離することである。酸は尿から排泄される。アルカリはカルシウム、カリウム、マグネシウムと結合して血液に戻されて、血液と組織の酸を中和させる。身体が過度の酸性である場合、肝臓、腎臓、膀胱がストレスを受けて、これらの酸をキレート(結合)する予備のアルカリを消耗してしまう。すると、局所的問題が始まる。

砂糖、発酵、慢性的疲労

これらの微生物は身体が使うことにしている血糖からエネルギーを得て、身体のタンパクの食べて成長増殖している。大の甘党はこれらの微生物の必要からである。これらの微形体が好きな食物のひとつが砂糖である。低いpH(酸性)で繁殖するので、パスタ、穀物、イースト含有パン、ジャガイモ、とくに果糖の多い果物とジュース、砂糖分の多い食品なら何でも、多く食べるように迫られる。果物はよいが、悪化した生物学的領域では逆である。したがって、果物を食べると、真菌と発酵にはいい食品となる。

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毒性廃棄物と慢性疲労

これらの微形体はその廃棄物で身体を毒する。その廃棄物はアセトアルデヒド、尿酸、アロキサン、アルコール、乳酸など。慢性疲労とはグルコースを発酵して酸と交換することを指す。これらの酸はアセトアルデヒドとして知られる。アセトアルデヒドは次に分解されてアルコールになる。その結果は疲労である。私はこれを酩酊病と呼ぶ。過度の酸性化により自分を毒しているだけのことである。自分のシステムにアルコールを生産しているのである。エネルギーの欠如を患っているのなら、必要なことはこの生物学的領域を変化させることだけである。

微形体の反転

これらの生物は破壊不可能である。つまり、殺すことができない。できることはその形態を変え、退行させることだけである。杆菌は生物学的領域を変化させて文字通りその周期を元に戻すと展開する。イースト、真菌、カビとそのバクテリアを退行させることによりこれらをコントロールでき、サプリメント補給と食事により廃棄物を中和することができる。目のなかったものに食らいつくことをやめるだけでそれができる。

寄生体

これらのカビ、真菌の微形体が血液細胞と混じった様子を顕微鏡で見ることができる。これらは健康な人でも不健康な人でも見られる。身体はカビが生え、腐敗し、基本的に寄生体の宿主となる。実際に寄生体は酸性過度のより深刻な問題の副作用である。真菌やイーストの発酵や腐敗作用を受けているとき、寄生体になぜこんなにも関心を寄せるのか? 吸虫や回虫や扁虫に感染している人は10%以下であるが、血液分析をすると、これらのより高次の真菌の発展形態に感染している人は100%である。これから自由な人は1人もいない。

回避すべき食事

多形現象のバクテリア、イースト、真菌、その毒が典型的に貯蔵食品や発酵食品にいることをほとんどの人が知らない。以下のリストの食品は多形現象のバクテリア、イースト、真菌、カビが多く、特異的な病気の原因となるカビ毒を産生するので、決して食べないこと。ソーセージ、ベーコン、サラミ、ハムなどの豚肉は多くのガンと関連する真菌を含んでいる。牛肉、小羊、鶏肉、七面鳥は多様な異なる真菌を含んでいる。すべてのキノコを避ける必要がある。キノコにいいキノコというものはない。キノコは真菌の胞子を血液と組織に拡散する。ピーナッツとカシューナッツは25以上の真菌の菌種を含んでいる。牛乳、チーズ、ヨーグルト、コテッジチーズ、アイスクリーム、バターなどの乳製品には真菌が含まれている。卵、大麦、トウモロコシ、貯蔵穀物、シリアル、貯蔵ジャガイモには真菌が群生している。アルコールには真菌が含まれている。タバコにはイーストが含まれている。ビール酵母菌やパン酵母菌といたどんな形態のイーストも食べない方がよい。蜂蜜、メープルシロップ、コーンシロップ、ショ糖などの砂糖は多形現象のバクテリア、イースト、真菌、カビを成長促進させ、最高5時間も免疫系の反応を抑制する。どんな形の酢、カフェインも果糖の多い果物も血液と組織を酸性化する。オレンジジュースを飲むと、オレンジジュースの砂糖がすぐに血流に放出されてしまうので酸素と結合されない。したがって、この砂糖は発酵し、産生された酸は文字通り免疫系を麻酔にかける。このため、免疫系は3−5時間閉鎖される。リンゴジュースは同じである。問題は過剰な砂糖である。ブドウジュースとグレープジュースは少し違う。リンゴ、オレンジ、モモ、バナナは発酵しやすい。バナナは過剰な発酵と腐敗により、肝斑が生じる全く同じやり方で肝斑を生み出す。手や顔や腕に斑点やあざがあったりしたら、それらは皮膚表面に出た毒である。それらは酸である。これはひとつの病気の発現である。内部領域の変化をしなくてはならない。そうすれば、これらの斑点は消えるか色が変わるだろう。マーガンリンやショートニングのような水素添加油と植物油は正常な生物学的過程を干渉するので、コレステロールを上げ、肝臓の解毒システムを干渉し、必須脂肪酸の働きを干渉する。

均衡の周期

均衡の周期はエネルギー、活力、清浄な輝く目、明晰な心、集中、きりりとしまった身体といった印に反映されている。最初の段階は内部のpHを弱アルカリに回復させることである。食事を80%アルカリ、20%酸性とする。4対1の割合である。重篤な病気を抱えている人は100%アルカリの食品を摂る。少なくとも5対1の割合とする。

摂るべき食事:アルカリ食品

身体を実際に治癒させる食物を食べる必要がある。庭に戻って緑葉野菜のような葉緑素の多い生の食物を食べる必要がある。朝食にはサラダを、昼食にはサラダを、夕食にはサラダを食べる。夕食にいいものは昼食にもいいし、昼食にいいものは朝食にもいい。血液と組織をアルカリ過度にする必要がある。濃緑黄野菜、根菜類、新鮮な野菜ジュース、葉緑素の多い食物、アルカリのアーモンドやヘーゼルナッツのようなナッツを食べることができる。特に12時間浸したあとに食べるとアーモンドは酸素の含有量が高い。発芽穀物、アルファルファのような豆、リョクトウ(緑豆)、クローバ、大根、種、亜麻油・ルリジサ油・バージンオリーブ油からの脂肪酸、豆腐のような大豆製品、スペルト小麦・キビ・ソバのような穀物、ハーブ、香辛料、海草、タマネギ、ニンニク、蒸留水。アボカド、レモン、ライム、グレープフルーツのような果物は砂糖が少ないので、発酵しにくい。

脂肪とカルシウムは酸を中和させる

肥満は脂肪の問題と考えられているが、そうではない。肥満は身体が過度に発酵して酸を生む食べ物に耽溺しているときに示される身体の反応である。脂肪が保持されているのは生命持続の臓器から少しでも遠くに酸を連れ出すためである。食事から脂肪がなくなれば、自分を毒しているまさにその酸によって文字通り殺されてしまう。薬でコレステロールを下げようとすれば、心臓発作を起こすことになる。というのは、脂肪がなくなれば、酸は細胞を破壊してしまうからである。脂肪は酸と結合して中和し細胞の毒から保護する。同じことがカルシウム遮断薬についても言える。米国では、カルシウム遮断薬を使えば、心臓発作のリスクがあるとFDAは警告している。なぜか? 身体が毒と結合する十分な脂肪がなければ、毒と結合するカルシウムを利用しようとするが、薬でカルシウムを遮断させるなら、毒と結合するものがなくなり、心臓発作で死んでしまう。

関越炎、結石、腫瘍

結石ができるのは、カルシウムが過度の酸を中和して結石をつくるからである。関節炎ができるのはカルシウムを用いて酸を中和するからである。砂糖は微形体に代謝され酸を生み出し、次にカルシウムと結合して、関節の中にカルシウムが沈着するからである。脳や乳房のなかにもカルシウム沈着を起こす。カルシウム沈着は腫瘍の前に起こる。というのは、それは酸性過剰を中和する最初の防衛線であるからだ。骨粗鬆症は食事から得るカルシウムが十分でないときに起こる身体の反応である。骨からカルシウムを取り出して酸を中和する。サプリメントとしてカルシウムをもっと取れば、カルシウム沈着がもっと起こり、結石が起こり、乳ガンや前立腺ガンが生成されることになる。

ガン、ホルモン、酸

ガンはウィルスではない。カビが産生する酸の問題である。身体の最も弱い部位での過剰な発酵のせいで生じる感染である。喫煙でガンを生じさせるものはイーストと砂糖である。イーストは砂糖を使ってタバコの葉の発酵過程を加速している。ガンは局所的問題が転移するといったものではない。ガンは全身の問題が局所に現れるのである。研究からわかっていることは、ホルモンのサプリメント補給は乳ガンのリスク要因である。ホルモンを補給すると、これらのホルモンはバランスを失った身体で発酵し、酸を生み出す。この酸は除去されなければならない。これらの酸は脂肪組織内に貯蔵されるが、乳房より他にもっといい貯蔵に向いている場所があるだろうか。感情や恐れが腐敗の過程をどのように進めるおそれがあるか? 生物学的には単純である。感情はホルモン放出により酸を生み出す。このホルモンは発酵して酸を生み出すからである。そこで、基本的に避けるとよい食物に食らいつくようになる。

ガンになった人は、尿に過剰なタンパクが見つかる。というのは、細胞が破壊され、これらのタンパクが血流に自由に流入して、尿として排泄されるからだ。

酵素

酵素は摂らなくてもよい。アミラーゼやプロテーゼは使っていない。私は酵素的なフォーミュラを開発した。それには砂糖は含まれず、緑のパパイヤ、ニンニク、組織の塩分の入った複合体からできている。

出典Consumer Health Organization of Canada, May 1997, Volume20, Issue5
(カナダ消費者健康機構、1997年5月号、20巻5号)

【解説】

ここに紹介したDr. Youngの見解はアレルギー除去療法を進めるNAET開業者にとって非常に示唆に富んでいる。Dr.デビもアルカリ食品を多くとりなさない、特に野菜ジュースを毎朝とるといいですよと言っている。というのは、酸性体質の人はアレルギー治療がなかなか進展しないからだ。アレルギー治療をより効果的にするためには、食生活を酸性食品からより多くのアルカリ食品を摂るようにしなくてはならない。

Dr. Youngは自著のなかで、アレルギー、環境物質に対する過敏症、疲労、神経学的アンバランス(うつ、不安症、パニック症候群、頭痛、めまい、月経前症候群など) 、小児疾患(中耳炎、乳幼児突然死症候群、など)、砂糖代謝病(糖尿病、低血糖症)、肥満などほとんどすべての疾患は酸性体質から生じると述べている。

このため、酸性体質をアルカリ体質に変換することが健康への重要な鍵となる。実践的には、最適な酸アルカリバランスを維持する食事療法と独自に開発したサプリメントを摂取することを勧めている。したがって、Dr. Youngによれば、酸アルカリバランスを最適に取り戻せば、アレルギーは除去されることになる。

確かに、臨床上、カルシウムmixを100%除去した後にカルシウムのサプリメントを摂ってもらうと、アレルギーの症状がかなり好転するケースが多い。これはカルシウムが酸と中和するからである。しかし、アレルギー除去を続けながら、患者さんにもアルカリ食品への食生活改善をしてもらわないと、カルシウム剤の補給は関節炎、結石、腫瘍の原因をつくりだすおそれがある。

問題は次の点にある。血液・体液の酸性化がはたして現代の偏った酸性食品の摂取だけを原因とするだろうか?

アレルギー治療に携わっている人間からすると、そう単純ではない。たとえば、アルカリ食品やこれらの食品を消化させる消化液にアレルギーがある場合、栄養学的に見れば、アルカリ食品の消化吸収が悪くなり、酸性体質に傾く。卵、カルシウム、野菜、ミネラル、乾燥豆などにアレルギーがあれば、確実に酸アルカリバランスを崩す要素となる。ベーシックの治療が大事な所以である。

しかも、これらのアルカリ食品にアレルギーがある場合、却ってそのサプリメント補給は事態を悪化させる。したがって、まずアルカリ食品のアレルギーを除去することが最初にしなければならないことである。その後になって初めて、必要なサプリメントの補給をしなくてはならない。

この大事な点を踏まえれば、Dr. Youngの指摘は誠に正鵠を射たもので、NAETの治療の中に十分活かすことができる。

とくに、多形現象といわれる身体内部からの微生物の感染は重要な指摘である。外から侵されるのは2次的なもので、本源的な病因は身体内部の微生物の産生する毒であるとする指摘。この影響を排除する意味からも、アレルギー治療とその後の食生活改善、サプリメント補給が非常に大切となる。




論説─急性の背部痛が慢性になる理由

−慢性の背部痛は長引いた急性の背部痛と同じではない−

British Medical Journal 1997;314:1639(7 June)

Malcom IV Jayson 教授

マンチェスター大学医学部付属ホープ病院リウマチ病センター・マンチェスターとサルフォード疼痛センター

○ 急性の背部痛は極めて多い。自然改善率も高く、6週間以内に自然寛解するものは約90%である。簡単な急性の背部痛、つまり神経根の症状や脊椎の病理徴候のない患者は安静が必要だが、それも痛みがひどくて立ったり歩けなかったりする場合に限る。期間も短いほうがよい。鎮痛剤と早期の身体の活動は回復率を改善させ早期の職場復帰を可能にする。

○ こうした楽観的な所見にもかかわらず、慢性的あるいは再発性の背部の問題を成人の39%までが罹患している。腰椎ヘルニア、線維輪の断裂、脊椎狭窄、すべり症といった特異的な器質的な問題に診断を求める努力が払われてきた。しかし、大多数の症例では、これらの疼痛源を特定するのは不可能である。脊椎の可動域の低下、レントゲンによる脊椎症、椎間関節炎、MRIによる椎間板変性と突出の徴候を示すこともある。しかし、これらの特定されたお決まりの特徴は背部痛の存在との関連性は非常に弱い。

○ 広範な疫学的研究が示すところによると、背部の問題と遺伝的要因、身長、体重、歪み(全身性を除く)、脊椎の動き、筋肉の強さ、椎間板変性のレントゲン徴候のあいだには関連性がほとんどないか、まったくない。もっと重要なのは呼吸循環の病気、喫煙、心理的病状、劣悪な職場環境、社会階級、教育、収入である。とくに、背部痛のない人々を研究したところによると、将来背部痛が出ることが予想される要因に、以前の背部痛、頚部痛、その他の筋骨格系の疼痛、子どもの数、仕事の不満足、精神的病状がある。

○ 機械的な背部痛の病理発生に血管損傷が基本的役割をはたしているという証拠が増大している。椎間板変性は動脈硬化と脊髄動脈狭窄と関連し、椎間板変性と椎間板周囲の動脈の吻合の閉塞は線維輪の血管支配の増大と関連している。背部痛と呼吸循環の病気、喫煙との関連は動脈の病気がはたす役割の可能性を支持している。椎間板の変性と突出は硬膜上静脈叢に対する圧力と関係している。このため、静脈弛緩、神経根浮腫、神経周囲と神経内の線維症、神経萎縮が起こる。静脈の圧迫は脊椎の2、3のレベルで起こり、特定のセグメントで血流が低下する。炎症反応は機械的脊椎損傷と関連している場合が多い。病理研究によると、ヘルニアによる髄核物質への局所組織の反応は、上皮組織の増殖、血管弛緩と収縮、コラーゲン増殖が原因であるようだ。この増殖する血管組織内の疼痛線維が関与する。これらの変化は直ちに特定できるものではないが、にもかかわらず、疼痛の産生の可能性は明白であり、血管性疾患との疫学的関連性とも関係している。

○ 患者の中には、知覚過敏、疼痛過敏(ちょっとした痛みの刺激でも過大な痛みを経験する)、異痛症(皮膚のわずかな刺激で痛みが起こる)、下肢の血管運動の変化(冷えに敏感)と関連しているものもいる。この臨床上の特徴は交感神経が関与した痛み(別名、反射性交感神経ジストロフィー)を示唆している。交感神経の鎖は脊柱の両側を下行し、交感神経線維は脊椎と椎間板の周囲と内部で吻合している。

○ 交感神経系の関与は長いあいだ背部の問題を抱える患者、とくに脊椎手術に失敗した患者さんの間で認められてきた。下肢の血流量の低下(交感神経の機能障害のためと考えられる)が80%の坐骨神経痛の患者に、また69%の腰痛患者に認められた。局部麻酔による交感神経ブロックは症状を一時的に緩和する。また、このテクニックは交感神経による疼痛の診断テストとして使われることが多かった。残念ながら、交感神経切除術はごく短期的な改善しかもたらさないようだ。最新の研究が示唆するところでは、交感神経による疼痛は脊髄内部の中枢性の神経修飾の変質から生じており、この種の交感神経性の症状が複雑な居部的疼痛症候群の一部となっている。

○ 末梢性の傷害は中枢神経系の興奮性を増大する。後角の内部で、末梢性の疼痛線維の刺激は、長期に放出されるので、活動を増す。そのため、患者は疼痛の身体的原因が治癒した後にも長いあいだ痛みを感じ続ける。後角臍傍は求心性インパルスに対する敏感度を増す。このため、患者は末梢組織の損傷の証拠に比例しない痛みと圧痛を経験する。疼痛過敏と異痛症がそれである。後角の受容器の領域は広がり、そのため、疼痛線維の及ぼす損傷の範囲よりも広い範囲に痛みを感じる。

○ この後角内部の機序はなぜ多くの人々がごくわずかな刺激に過敏となり痛みを感じるのか、痛みはしつこく、組織の損傷の程度より大きく、範囲も広がっている、その理由を説明する。この種の痛みはたいてい正常な対側の四肢と比較して特定される。しかし、この症候群が両側の四肢に影響すると、診断は困難となり、臨床的な洞察力が貴重となる。

○ さて、我々は脳内部における背部痛の中枢性の感覚を研究し始めている。特異的な原因や異常が特定されない非典型的な顔面痛の患者の研究によると、脳の帯状回部位の異常な活性化が認められた。また、同様の研究が現在、慢性的背部痛の患者に対して行われている。脳と脊髄内部における中枢性の神経修飾の修正が心身の影響を統合する機序を与えており、そのため心理的疾患と関連した修正予後に直接適合する見込みが高い。

○ 慢性背部痛の評価は急速に変化している。患者は疼痛の原因である特異的傷害を注意深く評価するとよい。このなかには、静脈内増強CTやMRIによる血管性疾患の特定も含まれる。注意深い臨床的問診と検査(そのなかにはうつ、異常な体性感覚の心理的スクリーニングや疼痛描写を含む)は心理的影響や中枢性の神経修飾を考慮しなくてはならない患者を特定することになる。今では我々は、多くの患者の慢性の背部痛は急性の背部痛が長引いたものと同じでないことに気がついている。



(下線は訳者)

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